………。
どれくらい時間が経っただろうか。
不意に、私のポケットの中でケータイが震えた。
「……ん?」
ケータイを出して画面を見てみると。
着信はメールで、差出人は。
「アヤ、どうかした?」
「や…。なんか、京佑くんから呼び出し?」
「キョウから?」
私は頷いて、立ち上がった。
「諒兄!私用事できたから出かけてくるね!今日の対戦は嘉乃がやってくれるから!」
ゲームに集中している諒兄にちゃんと聞いてもらえるように、声を張り上げてそう言った。
「え…!?ちょ、ちょっとアヤ、私ゲームなんてやったことないよ!!」
私の言葉に驚いたようで、焦ったように言う嘉乃。
「いいから!……ね!諒兄、さっきも言ったけど、嘉乃はゲーム初心者なんだからちゃんと教えてあげてね!!」
諒兄が返事をしないのを了承と取って、私は部屋を出る。
依然テレビ画面から目を離さない諒兄と、困った顔で私を見る嘉乃を残して。
「……なんだろう」
廊下に出た私は、思わずそう呟いていた。
京佑くん、昨日の今日で呼びだしてくるなんて。
嘉乃は、怒っても落ち込んでもいなかったって言ってたけど…。
やっぱりちょっと、会うの怖いかも…。
なんてそんな想いは少しだけあったけど。
私は一度部屋に戻って小さめの鞄に財布とケータイを入れ、指定された駅に向かったのだった。


