さすがの嘉乃も、まったく自分に興味のない様子の相手に戸惑ったようで、困ったような顔をしていた。


……だから、最難関って言ったでしょ。


私は心の中で小さくため息を吐いた。


ピコピコと器用に動く諒兄の指がなんだか恨めしかった。


人としてさ、どうなのよ?

話してる人の目を見て話を聞きましょうって、基本でしょ!?


……まあ、今更なんだけどさ。


こうなるのは、分かってたけどさ。



どうしたって呆れたくもなるよね。



「あのね諒兄、嘉乃、ゲームってあんまりやったことないから見てみたいんだって。ここで見ててもいい?」


「別にかまわない」


「ありがと」


私は、諒兄の後ろに腰を下ろした。


それに倣うようにして嘉乃も私の隣に座る。



「……」


それから、何を話すでもなく。

テレビから聞こえるゲームの効果音だけが部屋に響いた。



『これ、どうすればいいの?』



時々私に注がれる嘉乃の視線がそう言っていたけれど、今の諒兄はゲームしか見えていないので私にだってどうすることもできない。


諒兄が、次に自分と画面以外に興味を示すのは。


……もはや日課と化している、私との、対戦だ。



諒兄の好きなゲームは、戦闘ゲーム。


そして、一日一回、必ず私にその相手をさせる。


今は家を出ている、諒兄より4つ上の兄がまだ家にいた頃は兄がその役目を担っていたが、今は、私だ。


……だから私は、望んでもないのに無駄にゲームが強くなっちゃってるんだけど…。



……まぁ、とにかく。

嘉乃をちゃんと紹介できる、っていうかちゃんと人として認識させるには、その時しかなかった。

今は、一応挨拶はしてたけど、空気程度の存在に違いない。


我が兄ながら、本当失礼な男だ。