「あはは、京佑くん、相当悪い男なんだねぇ」
なんだか、嘉乃の力説を聞いていたら本当に嘉乃の言うとおりな気がしてきて、私は思わず笑ってしまった。
「悪い悪い!だからアヤ、ぜーったい、謝らないでね!調子のるかもだしっ」
「了解了解。でも、ま、私が負けることはなさそうかな…。あの人のこと好きになるなんて、どうしたってなさそうだもん。あ、そうだ嘉乃。今日諒兄全休らしいから、家にいるんで。放課後、家来て。紹介する」
諒兄ってのは岬家の次男で、嘉乃のゲームの相手だ。
つまり私が嘉乃とくっつけようとしてるのが、諒兄。
「全休?」
「火曜は講義ひとつもとってないんだって。だから、休み」
「へー。いいな」
私も嘉乃も、高校卒業後の進路は大学じゃなくて専門学校志望だから、全休が毎週あるようなキャンパスライフはたぶん訪れないんだよね。
「予定、大丈夫?」
訊くと、嘉乃は頷いた。
「うん、平気」
にっこり笑った嘉乃に、私は苦笑した。
……うちの兄、本当、最難関ですよ。
と、心の中で呟きながら。


