店内は静かな雰囲気だったので私は一旦席を立った。
「もしもし」
『…綺深?今平気?』
電話は、京佑くんからだった。
ディスプレイに名前が表示されたとき、嘉乃との会話の内容が内容だっただけに動揺しそうになったけど、嘉乃にはそんな動揺は悟られずに済んだみたい。
「うん、電話なんて珍しいね。…どうしたの?」
『いや…。俺、そういえば言ってなかったなって今唐突に思い出して』
「言ってないって?」
『……24日、空けといて』
「へ」
『それだけ。じゃあね』
「ちょっ…」
切れた。
ツー、ツー、とむなしく耳に響く電子音に若干戸惑う。
言い逃げすぎる。
そこは、空けといて、じゃなくて、空いてる?じゃないの?
……まぁ、京佑くんが空けろって言うなら何があったって空けますけど…。


