「ごめんなさい。…樫野くんの気持ちには、応えられない」
私は、深く頭を下げた。
ロビーで待ち合わせて、10分前にはもう樫野くんが来てくれたので、ふたりで外に出た。
人の来なさそうな場所を選んで、私はそう返事をした。
私の言葉に、樫野くんは黙ったままだった。
「……頭、上げろよ」
言われて、ゆっくりと顔を上げると、樫野くんは今にも泣きだしそうなくらい顔を歪めていた。
そのあまりに悲し気な顔に胸がチクリと痛んだ。
「……分かってたよ、なんとなく。フラれるんだろうなってことは」
「…樫野くん」
「……あいつのことが、好きなんだろ?」
────傷付いてるのは、樫野くんの方なのに。
どうして、私もこんなに苦しいんだろう。


