「京佑く」
「もう、部屋に戻らないとね」
私の言葉を遮って、京佑くんは私の手を掴んで歩き出した。
「ねぇ」
「目、腫れてるから、あんまり顔上げない方がいいんじゃない?」
労わるような優しい声は、本気で私のことを思ってくれてるように聞こえる。
…でも、私の言葉は聞いてくれないみたい…。
どうして……?
「綺深!」
部屋の前で、美都が待っていてくれた。
する、と京佑くんが私の手を離す。
「じゃあね。おやすみ」
にこ、と微笑みを残して京佑くんは去っていく。
だんだん遠ざかってく後ろ姿に、私はなにも言葉を返すことができなかった。


