「しらばっくれてもダメ。……ねえ、聞いてたんでしょ?」
「何も聞いてないってば」
「嘘」
「嘘じゃないよ」
私の言葉に、京佑くんはふっと笑った。
……何?
「……じゃあ、なんでそんなに顔赤くなってるの?」
「っ!?あ、赤くなんてなってないっ」
「京佑、まだ?」
「!」
突然、部屋の中から、艶っぽい女の人の声が聞こえてきた。
今度はさすがにはっきり聞き取れる。
うん…、香苗ちゃん、なわけないよね…。
てことはこの家の人じゃないわけで。
てことは家族の女の人じゃないわけで。
こんな夜中に、乱れた髪で、服で、男女で。
「………」
……うわ。
マジですか?
「うん、ごめんね。今日は邪魔が入っちゃったから、また今度でもいいかな?」
部屋の中に向かって、京佑くんは申し訳なさそうに笑って見せた。
……さっき、私に見せた困った笑いと、一緒だ。
「……ここで、お預け?ずいぶん酷いんじゃない?」
「ごめんね。今度必ず埋め合わせするから」
女の人に向かって話している京佑くんの横から、部屋の中がちらりと見えた。


