聞き耳を立てるのもどうかとは思ったが、残念ながら好奇心が勝って。
私の耳は自然に中から聞こえる声を拾ってしまっていた。
「……ん、……っと、きょう…、ふ…」
「なに?はっきり言わないとわからないよ?」
くすくす、という笑い声と共に京佑くんの声ははっきり聞こえるんだけど、相手?もうひとりの声は途切れ途切れにしかきこえない。
はじめは電話でもしているんだと思ったけど、どうやら違う。
……京佑くんの他に、もうひとり部屋にいるんだ。
しかも、声を聞く限り、若い女の人。
……え?
こんな時間に、女の人…?
でも、この家にいる女の人って…。
嘉乃か香苗ちゃんくらいだよね?
お母さん、に対する口調ではなさそうだし…。
嘉乃は隣の部屋で安眠中だ。
じゃあ、香苗ちゃん…?
しかし、思考をフル回転させていると、何故か不意に嘉乃の言葉が頭に浮かんだ。
『好きでもないのに思わせぶりな態度でそういう関係を持つなんて最低でしょ?』
あの時は深く考えなかったけど。
……そういう関係って、もしかして。


