「あ、ここだ」
嘉乃が、そう言って私たちに割り当てられた部屋のドアを開けた。
「うわ、ロビーの真ん前!これじゃ抜け出すとか無理だねー」
班の女の子の中のひとりがそう残念そうな声を上げた。
「え。美都、抜け出す気でいたの?」
パタン、とドアを閉めつつ訊く。
水川美都(みずかわ みと)ちゃん。
班のメンバーのひとりで、茶髪ボブの似合う、小顔ちゃん。
ちなみに、美都とは一緒に野球部のマネージャーをやっていたので結構仲良し。
「え?…綺深知らないの?ここ、屋上からめっちゃ綺麗に星が見えるんだよ!」
「へー…!」
そういや、美都は天文大好きっ子でしたね。
そりゃ、こんな山の中じゃ綺麗な星も見えるでしょうな。
「去年は部屋が最上階でしかも端だったから、抜け出して見に行ったんだけど…」
「今年は無理かもね、ここじゃ…」


