そう訊くと、嘉乃は一瞬意味が分からない、というようにきょとんとした顔をしていたが、やがてぷっと吹き出して笑いだした。
「えーっ?なにそれ?ブラコン?私が?アハ、そんなわけないじゃん!」
「じゃあなんなの?なんで京佑くんの恋愛を壊すような真似…」
「恋愛?あー、そうだね、初めの1回はそうかも。でも、他は違うよ。キョウは恋愛なんてしないもん。好きでもないのに思わせぶりな態度でそういう関係を持つなんて最低でしょ?だから私が壊してあげてるの」
……えーっと。
なんかよくわかんなかったけど、京佑くんはモテすぎるゆえに好きでも無い女の子と付き合っちゃうってこと…かな?
だから、嘉乃はそんな爛れた関係許しませんってことでクラッシュしてる?
……っていう解釈で合ってますかね?
「え、じゃあ最初の1回は、って?」
訊くと、嘉乃は急に真面目な顔になった。
「……だって、あの子じゃキョウを傷付けると思ったから」
「え?本当の彼女だったのにクラッシュしちゃったの?」
少し間をおいて、嘉乃はコクリと頷いた。
「キョウはその子のこと大好きだったんだよ?……でも、相手の子はそうじゃなかった。その子が教室で堂々と年上の彼氏の自慢してるの聞いて、二股!?って思ったら、私、カッとなっちゃって、つい。…私が口出すようなことじゃないってわかってたんだけど」
「……うーん。なるほどね…」
嘉乃は京佑くんを思っての行動だったんだろうし(具体的にどうやって壊したかなんて知らないけど)、それは責められないなぁ…。
「キョウ、今もそのこと根に持ってるんだ。しつこくない?私、キョウがその子のこと大好きだったの知ってるから、二股掛けられてたんだよ、なんて言えなかったし、恨まれるのは仕方ないけど…、でも中2の頃の話だよ?そろそろ水に流してくれてもいいと思うの!」
「まあ…、それだけ大事な恋愛だったんじゃないの?」
自分が正しいと思ったことはとことん貫き通す嘉乃が、本当のことを言えないくらいに溺愛してたってことは、相当だ。


