「……送られるの、嫌なの?」
「嫌、っていうか…。悪いじゃん。そんな夜遅いわけでもないし」
部活をやっていたころは、いつもこれくらいの時間に帰ってたし。
「…言ったでしょ。ひとりで帰れるのなんか知ってるって」
「は…?」
意味が分からず眉を寄せた。
すると、京佑くんは呆れたように笑う。
「綺深って結構鈍いよね」
「失礼な」
そんなことないでしょ。
「とにかく、今日は家まで送り届けますので」
「なぜ敬語?」
「気分?」
あはは、と笑った京佑くん。
「京佑くんて、ほんとよくわかんない…」
「自分では結構分かりやすいと思うけどね?」
「わかんないよ」
なんで、そんなふうに笑うの。
また、好きになっちゃうんだよ。
もっと一緒にいたいって思っちゃうんだよ。
好きの気持ちに底が見えなくて、なんだか怖くなる。
このまま、どんどん落ちていって。
きっと、落ちて、落ちて、戻ってなんか来られない。
ねぇ。
私は、いつまでこの気持ちを隠し通せるんだろう──…。


