「うわっ!びっくりしたー、どうしたの?」
化粧水をぺたぺたと顔に塗っていた途中だったらしい嘉乃は、すごい勢いでいきなり部屋に入ってきた私に驚いたようで、目を丸くしてそう言った。
「ど、どうしたもこうしたもないっ」
「はいー?」
私は、何言ってんだ、とでも言いたげに首を傾げた嘉乃に近づいて、声を落とす。
「京佑くん!感づいてるよ、嘉乃が私とくっつけようとしてること!」
「えっ」
「ていうかっ!やっぱり全然性格悪くないじゃん!嘘吐くのめっちゃ辛かったんですけど!」
そりゃ、なんか女慣れしてんな、とは思ったけど。
壁に追い詰めるとか、なんか慣れてたみたいだし。
いや、どんな慣れだよって感じですけど。
でも、少なくとも傲慢なところなんて少しも感じなかった。
私のイメージの中では、初対面のときに感じた爽やかさは健在だ。
「……なんでそんな焦ってるの?別にばれてもいいよ?」
「はあああ!?」
首を傾げたまま言い放った嘉乃に、私は思わず叫んでいた。
さっきの私の罪悪感は一体なんだったの…!?
「だって、キョウならすぐ気付くに決まってるもん。隠すだけ無駄。あんだけ彼女との中クラッシュしてきた私がアヤと仲良くなるのは許すとか、普通に考えておかしいと思うだろうし」
「ク、クラッシュって」
そういえば、嘉乃にはブラコン疑惑があったんだった!
それも確かめなきゃ…!
そう思って、私はずいっと嘉乃に顔を近づけた。
「京佑くんも言ってたけど、それどういうことなの?京佑くんが女の子と付き合うの嫌がるとか…。嘉乃ってもしかして、ブラコン?」


