「あ、あれは」
「うん」
精一杯顔を離そうとしたけど、いつの間にかさっきまで顎にあった手が、私の頭に回っていて、できなかった。
「嫌じゃないんでしょ?」
「い、嫌に決まって…、ん…っ」
はじめは軽く。
そのまま、ゆっくり押しつけられた唇が、角度を変えて私の酸素を奪う。
どうしよう。
頭、痺れてきた…。
嫌がらなきゃ。
離れなきゃ。
分かってるのに。
「俺、綺深とのキスは好きだよ」
「…ん……」
キスの合間に囁かれた言葉に、もうなにも考えられなくなって。
ただ、その甘い吐息に、翻弄されるしか、なかった。


