一瞬ハテナマークが浮かんだが、すぐにハッとして。
かあ、と顔が熱くなった。
「えと…。本当に、気にしてないです」
恥ずかしくて、思わず視線を逸らした。
さすがに、『事故チューのことですよね?』とは言えない。
けど、それ以外、ないだろう。
それに。
本当に、あれはただの事故だったのだ。
キスなんて呼べない。
ただ、互いの唇がぶつかっただけ──…。
「……そうか」
「はい。大丈夫です」
「……あれは、キス、というやつではないのか?」
「っ!!!??」
諒太郎の言葉に嘉乃は耳を疑って、そして、信じられない、と目を丸くして彼を見上げた。
──もしこれが漫画だったら、飲んでいたジュースを盛大に吹き出す場面だろう。
だけど、生憎今はなにも口にしていない。
だから、この衝撃をどう伝えたらいいのかわからない。
でも、こんなことを考えている時点で相当混乱しているんだと思う。
……諒太郎の口から、『キス』なんて単語が飛び出したことに。


