……それなのに。
どうしてこんなに緊張しているのだろうかと、嘉乃は自分で自分が分からなかった。
「くそっ!見せつけやがって!」
「彼女ならはじめからそう言えよ!」
悔しそうに悪態をつく男たちなど見えていないかのように諒太郎は歩き出す。
引っ張られるように、嘉乃もそれに付いていく。
強く握られた手に大きな安堵を感じながらも、一方で妙にそわそわした気分になっていた。
「話、またあとで聞く」
「ああ、なんか悪かったな」
「いや」
先程まで話していた男の人に諒太郎はそう声を掛けながらも、立ち止まることは無かった。


