「そうか。嘉乃」
「…えっ、はいっ!?」
諒太郎に唐突に名前を呼ばれて、一瞬遅れた返事になってしまう。
「行くぞ」
はい、と、もう一度返事をしようとする前に、嘉乃は驚いて息を呑んでしまい、それによって言葉も一緒に引っ込んでしまった。
────きゅ、と体温の低い少しひんやりとした諒太郎の掌に、自身の手が強く包み込まれたのを感じて。
瞬間、キュン、と胸が鳴った。
ただ、手を繋がれた、それだけで。
(な、なんで…?)
手を繋ぐくらい、なんでもない……、はずだ。
恋愛経験が豊富だとは思わないが、そこまで初心(うぶ)なつもりもない。


