腕時計を見ると、あと15分ほどで電車がくる時間だった。
今から行けばちょうどいいだろう。
「え、もう帰んの?」
しかし、歩き出そうとした私に、樫野くんは驚いたような声を上げた。
「だって、もう用もすんだ…し…」
……え?
私は、樫野くんの背後、歩いていく人の中に見えたひとりに、目を見開いていた。
「岬?どうした?」
不思議そうに、樫野くんは私の視線の先を追って振り返った。
私はハッとして、勢いよく樫野くんの腕を掴むと、出たばかりの雑貨屋に引っ張り込む。
少しして、その人は雑貨屋の前を通り過ぎていった。


