「そっか…」
じゃあ仕方ないか。
私は手に持ったマグカップを一度棚に戻す。
その時、マグカップの下の棚にも、同じ猫のシリーズあることに気づいた。
「これもかわいい!」
そう言って手に取ったのは、携帯ストラップだ。
マグカップに描かれていた猫が、にゃーん、と伸びをする体勢で付いている。
「樫野くん、これは!?かわいいよ!」
「ストラップか」
私からそれを受け取って、まじまじと見ている。
「妹さん、ケータイは?」
「持ってる」
「じゃあいいじゃん!可愛いし!」
ぺら、と値札を確認すると手ごろなお値段だった。
「そんなに高くないし!」
私の言葉に、少し考えていた樫野くんもやがて頷いた。
「ん、じゃあこれにする。買ってくるわ」
樫野くんはひょいっ、と先程のマグカップを持ち上げながら言う。
……え?
「樫野くん、マグにするの?」
「これは、岬に!」
「は?」
「今日付き合ってくれた礼!」
樫野くんは早口にそう言うと、くるりと背をむけてレジに向かおうと歩き出した。


