それから、気がつくともう外に出ていた。
「なんだか後半はやけに静かだったね?」
なんて京佑くんにも言われたけれど、まったくその通りで。
いつもなら怖くてどうしようなないはずのお化け屋敷なのに。
一緒にいる人に話しかけることで気を紛らわせるのに。
なのに、さっきは、気を紛らわせるまでもなく、私の意識は別のところにあったような気がする。
まわりの暗闇よりも、すぐ隣の力強い腕にばかり、目に入っていた。
はじめは必死すぎて気にも留めていなかったけれど、細身に見える一方で、触っ
てみると京佑くんの腕はしっかりした筋肉がついていて。
あ、男の子なんだ、って、今更思った。
そうだよね、バスケ部って言ってたもんね。
それなりに鍛えてるよね…。
「……み、綺深!」
「え!?あ、ごめん、何?」
ぼんやりしていたせいで、呼びかけられているのにも気づかなかった。
「なにぼーっとしてんの。次どうする?疲れたなら少し休む?」
「え。何それ優しい。どうしたの?」
他人を気遣う心があったなんて!
「失礼なやつ。俺はいつだって優しいでしょ?」
「どの口が言うの?」
待ち合わせの時の全力疾走を私は忘れてないんだから!
「でも、まだ大丈夫だよ!あれ乗ろうよ!」
私が指差したアトラクションを見て、京佑くんは笑った。
「また絶叫系」
「だって好きなんだもん」
「はいはい」


