顔を上げて、キッと睨む。


暗がりでよく見えないけど、京佑くんが笑ったのが空気でわかった。


笑ったっていうか、微笑んだっていうか…。



「綺深、くっついてくれるのは歓迎なんだけど、それだとだいぶ腕引っ張られて歩きづらいんだよね」


言われてみれば、確かに私が京佑くんの左腕を抱え込んでいるせいで、彼の身体は左側に傾いていた。


「あ、ごめん」


反射的にぱっと手を離す。


「違うでしょ」


「え」


グイッと腕が掴まれた。


「ここ」


そう言って、京佑くんはもう一度自分の腕につかまらせた。


「え、だって引っ張られるって…」


「さっきのはあまりにも綺深の方に引っ張ったからでしょ?俺の方に体重かけてよ。そしたら存分に抱きついてくれていいから」


「……」


抱きついて、って改めて言われると非常にやりづらいんですが。


「ほら、早く。さっさと出たいんでしょ?」


「……じゃあお言葉に甘えて」


そろり、ともう片方の手も京佑くんの腕に絡ませた。


「行こっか」


「…うん」


小さく頷くと、京佑くんは、またふわりと、笑った。