目的地の遊園地までは、駅からバスに乗って行く。
2人掛けの座席に座ると、思った以上に隣に座った京佑くんとの距離が近くて、なんだか緊張してしまった。
私たちの他にも何人か乗っていたけれど、バスの中はとても静かだった。
窓側に座った京佑くんは、私の方は見ずに黙って窓の外を見つめている。
そんな横顔も、悔しいくらいに綺麗だった。
ちなみに、バスに乗り込むときに一度は離した手は、また、握られている。
座席に座って、バスが動き出すと同時に、京佑くんは私が膝の上に置いていた手に自分の手を重ねるようにして握ってきたんだ。
どうせ、拒否したって認めてくれないってわかっていたから、そのままにした。
……文化祭で、京佑くんと手をつないだとき。
あの時は、繋がれた手の温かさを感じた。
触れた部分だけが、熱を帯びているような感覚だった。
……でも、今は。
触れた部分だけじゃなくて。
今にも触れ合いそうな肩とか。
腕とか。
脚とか。
まるで、触れ合った手から熱が伝染してるみたいに、熱い。
それはきっと、緊張、だけがもたらす熱さじゃない…。
私は、触れ合うことなどできるはずもない心臓までが身体の熱さに感化されたように鼓動を速めていることを、認めたくなくて。
まっすぐ前を見たまま、自分を落ちつけるように。
身体の熱を冷ますように。
小さく、息を吐いのだった。


