「お、お待たせしましたっ!」
本屋に着くと、入口から見える棚に京佑くんがいた。
急いで駆け寄る。
「遅い。3分で来いって言ったよね?もう5分も過ぎてるんだけど?」
パタン、と見ていた参考書を閉じて、京佑くんはそう言った。
私服の京佑くんは、相変わらず、雑誌のモデルみたい。
顔だけじゃなくスタイルもいいから、遠くからでもすぐわかっちゃうよ。
「む、無理に決まってんでしょ!?だいたい、待ち合わせ13時じゃん!」
「そうだっけ?とりあえず、行くよ」
参考書を棚に戻し、京佑くんは歩き出す。
「ちょ、ちょっと待ってよ、走ってきたから、疲れた…」
思いっきり、息切れしてます、私。
「いいから。綺深がもっと早く来てないのが悪いんでしょ」
そう言うと、京佑くんは私の右手を掴んで歩き出した。
『綺深』
ふいに、文化祭で樫野くんとかわした会話が思い出された。
なぜか、カッと顔が熱くなる。
……ほんと、なんで?
「…ていうか、手…っ」
なんか、当たり前みたいに繋いでるし…っ!
「俺を待たせた罰。この前もそうだったんだから、今日だって断らないよね?」
そう言って、京佑くんはにっこり笑った。
「……っ」
前例って怖いんですね…!
「わ、わかった…」
渋々頷いた私に、京佑くんは満足気に頷いたのだった。


