「りょ、りょりょ諒兄ッ!!」


しばらくしてハッと我に返った私、は大きな音を立てて勢いよく諒兄の部屋のドアを開けた。


いや、開けたっていうか、ドアを蹴った。


ドアが完全には閉まってなかったから、つい自由な足を使ってしまった。


そして部屋に入ると、両手でお盆を持ったまま、仁王立ち。


チャプッという音と共にコップに入っていたオレンジジュースが波を立てて、お盆にはねた。



「ああ、綺深。帰ってたのか」



部屋の中で諒兄はいつも通りゲーム中で、視線をこちらに向けることなく、おかえり、と言った。



「ただいまっ!じゃなくて!諒兄、嘉乃に何かした!?」


「何かってなんだ」


「それがわかんないから訊いてんでしょ!?」



あんなに動揺した嘉乃、見たことないよ!


どんなイケメンに迫られても少しも動じることなく「ごめんなさいー。興味ないんでー」で済ませてしまう嘉乃が!


あんな、耳まで赤くしてるなんて。


信じられない!!



「なんかしたんでしょ!?」


お盆を諒兄の机の上に投げるように置いて、私は諒兄の隣に座った。


正座で。


詰め寄った。



「……なにもしていない」


「…いやいや、何、その間!」


「もし何かあったのだとしても、綺深には関係のないことだ」


「……えええ!?何それ!?やっぱり何かあったんだ!?」