電車を降りて駅を出ると、歩いてすぐの大きなお屋敷が嘉乃の家だ。
表は立派な看板の立つ和菓子屋さんになっていて、裏の住居の玄関から入る。
裏、とはいってもこれまた立派な門と手入れの行きとどいた庭のある、いかにも和風なお嬢様が住んでるって感じのなんとも豪勢な景色が広がっているんだけど。
ガラッ、と音を立てて嘉乃が扉を開けた。
「ただいまー」
と元気よく家に入っていくのに続いて、私も
「お邪魔します」
と言って靴を脱いだ。
さすが、お母さんが華道の先生なだけあって、入ってすぐのところには品のいい花器にキレイに花が生けてあった。
薄桃色のトルコキキョウがとても可愛らしくて、思わず笑みが浮かぶ。
「あ、それお母さんが朝生けてたんだよ。可愛いよね」
脱いだ靴をそろえながら、私の視線の先を見てそう嘉乃が言い、私は頷いた。
「うん。素敵」
「まあ、ありがとう」
「あ、お母さん」
ハッとして振り向くと、にっこりと笑顔を向けてくれている嘉乃のお母さんが立っていた。
「こんにちは!お邪魔します!」
「いらっしゃい、綺深ちゃん。すぐ嘉乃の部屋にお菓子を持っていくわね」
そう言ってにっこりと笑みを深めた嘉乃のお母さんは、嘉乃に似てやはりとても綺麗だった。
和のお屋敷に似合う、萌黄色を基調とした着物が楚々とした美しさを引き立てていた。
……うちの母親とは全然違うよ…。


