「そんな照れることないのにー!うわぁ、じゃあ私めっちゃタイミング悪かったよね!?ごめん、もしかして、邪魔しちゃった?」
ケータイ鳴らしちゃったのが告白中だったら、この上なく迷惑で空気読めてない奴だよね、私…。
樫野くんのケータイがマナーモードであったことを祈ってるよ…!
「だ、だから、そんなんじゃねーっつってんだろ!?」
「……なんでそんなに頑(かたく)ななの?」
「岬が信じないからだろ!?」
「だって、樫野くんが嘘吐いてるの、バレバレなんだもん。声上ずってるし、視線泳いでるし、顔赤いんだもん!!」
嘉乃といい樫野くんといい、なんでこんなにも素直な反応なんだろう。
こんなの誰だって嘘だって分かるよ!
「なっ」
「ていうか!!私はこんなことを言いに来たんじゃないよ!…はい!!」
なんでこんな言い争いになってるんだ!
私は、ポケットの中から先生から預かった鍵を出した。
掌に乗せて、ずいっ、と樫野くんに差し出す。
「……あ、俺のチャリ鍵」
「そうですね」
樫野くんは、私からその鍵を手にとって、ポケットの中に入れた。
「なんで岬が持ってんの?」
「落し物。先生から預かってきたの!」
「それは…、わざわざ悪かったな」
「…ううん、私こそ告白の邪魔してごめんね」
「お、お前…、まだ言うか」
樫野くんが、聞えよがしに大きなため息を吐いた。


