私は、ひとつため息を吐いて歩き出した。
コレ樫野くんに渡して、さっさと帰ろう。
私は下駄箱で靴を履き替えて、ポケットからケータイを取り出した。
『今どこ?』
それだけ書いたメールを樫野くんに送る。
後夜祭はクラスごととか学年ごととか、そういった括(くく)りなく行われるので、ただがむしゃらに全校生徒の中から探し出すのは難しいから。
校庭に出たところで、ブブ、とポケットの中でケータイが震えた。
見ると、樫野くんからの返信。
『なんか用?なら俺そっち行くけど』
という内容に、
『じゃあ部室棟の横で』
あまりに多く人がいるところを選ぶとまた探さなきゃならないし、と、たまたま目に付いた、人がいなさそうな部室棟を指定した。
ほとんどの人は校庭の中央で行われているフォークダンス会場にいるのだろう。
校庭の端にある部室棟のまわりはがらんとして人気がなかった。


