「りょ、諒兄っ!?」
私は思わず画面を二度見して叫んでいた。
「もしかして、諒兄から電話来たから、移動したの?」
私の言葉に、嘉乃はこくりと頷いた。
「話し声って結構響くから、職員室の先生にも聞こえちゃうかなって思って。ごめんね。探した?」
「ううん、それは大丈夫だけど…。諒兄、いきなり電話って何だったの?」
諒兄が家族以外に電話するの、初めて見た。
「それが…。今から家に来いって」
「は?」
「ゲーム、するからって。…私が前に、教えてくださいって言ったからかな…?」
「あー、多分そうだね…」
私はケータイを嘉乃に返しながらそう言った。
私はゲームが強いって言っても諒兄に勝てるほどではないし、毎日私が相手では諒兄も飽きてしまったのかもしれない。
「アヤ、私行ってくるね…。後夜祭、一緒に出られなくてごめん」
嘉乃は心底申し訳なさそうに私を見た。
「いいよ」
「……じゃあ、行くね」
「うん」
パタパタと駆けていく後ろ姿を、私はぼんやりと見ていた。
私はまっすぐ校庭に向かうけど、嘉乃は荷物を取りに教室に戻るから、途中まで一緒に、ということもできなかったのだ。
……私も、コレがなかったらさっさと帰るんだけどなぁ…。
ため息を吐きつつ、私はポケットの中にある小さな鍵を恨めしく思ったのだった。


