「失礼しました」
職員室を出ると、廊下はシンと静まりかえっていた。
待っていてくれたはずの嘉乃の姿もない。
「……?」
きょろきょろとまわりを見渡しつつ、とりあえず後夜祭会場である校庭に向かうべく、昇降口の方へ歩き出す。
「嘉乃?」
角を曲がったところで、ぼーっと立っている嘉乃がいて、私が声をかけると嘉乃はハッとしたようにこちらを見た。
「アヤ」
「職員室の前にいないからびっくりしたじゃん。どうかしたの?」
訊くと、嘉乃は小さく首を横に振った。
「……ねぇ、どうしたの?」
「……アヤ、後夜祭って自由参加だよね…?」
「そうだけど」
「ごめん、私、出られなくなった」
「え?」
いきなりどうしたんだろう、と首を傾げた私に、嘉乃が黙ったままずいっと、ケータイの画面を見せてきた。
……着信履歴?
「ケータイがどうかしたの?」
「よく見て」
嘉乃の言葉に、私は嘉乃からケータイを受け取って画面をもう一度見てみた。
「……え!?」
その着信履歴のいちばん上、時間は今から3分前。
発信者は、―――――『岬諒太郎』と示されていた。


