「先生、じゃあ私行きますね」
「おー。後夜祭楽しめよ。…って、ちょっと待った」
「はい?」
「これ、樫野に渡しておいてくれるか?」
そう言って先生が差しだしてきたのは、小さな鍵だった。
自転車の鍵かな…?
「いいですけど…。どうしたんですか、これ」
「落し物だよ。ご丁寧にキーホルダーにクラスと苗字が書いてあったから、さっき届いたんだ」
そう言われて、掌の小さな鍵に付いた、野球のボールを模ったストラップを見てみると、小さく『3-2 かしの』と書いてあった。
すごいな、高校生でチャリ鍵に名前書く人初めて見た。
「わかりました、渡しておきます」
「よろしくなー」


