「嘉乃!!」
バターン、と大きな音を立ててドアが開いて、その迫力に教室にいた皆が何事かと振り返った。
けれど、そんなことは気にせず、窓際で暗幕を取り外している嘉乃の元にずんずんと歩を進める。
17時のチャイムと同時に文化祭は終了していて、一般のお客さんはもう校内には残っていない。
生徒はもう片付けを開始していて、私のクラスもそうだった。
「アヤ?どうしたの?ドア壊れてない?大丈夫?」
「ドアより私を心配してよ!!」
ダンッ、と近くにあった机に怒りをぶつけた。
「え?何かあった?」
「あなたの弟はどういう教育を受けてらっしゃるんですか!?」
「どうどう。何があったの」
「あの、変態!!」
なにが『嫌がるふりして』よ!!
私は本気で嫌がってんだよ!!
自分がやれば嫌がる女子はいないとでも思ってんのか!
いや、思ってるんだろうな。
なんせ救いようのないナルシストだから!
「……ねぇ。アヤ、ひとりで百面相してないで、言ってくれないと一体何を怒っているのか全くわかんないんだけど」
嘉乃が、取り外した暗幕を持ったまま、眉を寄せて私を見ていた。
「……京佑くん、変態なんだもん!」
「そんなの知ってたでしょ?」
何を今さら、とでも言いたいのか、不思議そうな顔でそう言った嘉乃。