「……嫌だって、言ったら?」
なんだかお腹に響く、甘い声のまま、京佑くんは囁くようにそう言った。
スッと、口元を私の耳に近付けて。
「やっ」
思わず、それを避けるように、俯く。
そんなんで、離れられるわけもないのに。
「綺深、耳、真っ赤」
京佑くんの唇が、微かに、耳に触れた気がした。
「だ、誰のせいで」
「んー、俺?」
「分かってるなら離してよ…!」
なおも耳元に感じる甘い声と微かな吐息に、なんだか我慢が出来なくなって。
私は、きゅっと強く目を瞑った。
「綺深、ドキドキしてる?」
「……っ!してるわけないでしょ…っ!」
「…なんだ、せっかくこんなにくっついたのに」
からかうような口調でそう言って、ようやく京佑くんは私を解放してくれた。
「……顔も真っ赤」
「く、くっついてきたせいで暑かったから!!」
「それはそれは。失礼しました」
む、むかつく…!
「もう知らない!!」
すっくと立ち上がって、私は京佑くんの元から立ち去ろうとした。
が、立ち上がりかけた体勢で、ぐいっと腕を引っ張られて。
「嫌じゃないくせに嫌がる振りなんかして、俺を惑わそうとしてるの?」
なんて、再び耳元で囁かれた言葉に、私は不覚にもかあっ、と顔が更に熱くなったのを感じたのだった。
「この、変態ナルシスト…っ!次こんなことしたら、腹に鉄拳お見舞いしてやるんだから!!」
私はそう叫んで、京佑くんの返事も聞かずに駆け出した。
「鉄拳って!」
と、背後で失礼なことに京佑くんが笑っているのをなんとなく感じながらも。


