だけど 私と相澤くんで決めたこと。
『健吾と大峰には言わないでおこう。』
私たちのタイミングで2人が結ばれても続かない。
手が届きそうなのに差し伸べる勇気を振り絞れないもどかしさと。
事あるごとに浮かべるお互いの顔と。
少しのことでもドキンと高鳴る鼓動と。
少しのことでもズキンと刺さる胸の痛みと。
全てを知ってから 十分な時を過ごしてから。
それから2人は1つになるべきだから。
それからでないと 2人はきっとうまくいかないから。
付き合えれば 両想いであればなんでも良かった子どもの頃とは違う。
2人のタイミング 2人の気持ちを 何より大事にしなくてはならない。
そう語った相澤くんを 私は少しだけ見直した。
『…うん そうだね。 私たちは 見守っていよう。』
だから私の心は動かされた。
恋の始まりは あまりに突然なんだ。
私だってそう。
あの日あの時 あの部員が怪我をしなければきっと あまり目立たないタイプの私は剛に出会わなかった。
剛を知ることはなかった。
あなたに恋することも なかったんだ。
「奈穂 お腹減ったね。」
私の隣をあなたが歩くこともなかったんだ…。
「うん もうペコペコだよ。」
潤にも知ってほしい 感じてほしい。
大切な人がそばにいてくれる幸せ。
その儚さを。


