*潤Side*


温かな春の日に出会った人。


彼は野球部で 将来を期待されているらしい。


成績は悪いが 運動神経は誰よりも良い。


背が高く 手が大きく 茶色の目に 低い声。


…初めはただのランチ仲間。


だったはずなのに 何だかドキドキしてしまう。


目が合う度 すれ違う度 距離が近くなる度 見かける度 声を聞く度。


「大峰っ!!」


私を呼ぶ君の声にいつしか 期待を抱くようになって。


あぁ 久しぶりだなこの感じ。


ほら この胸の奥がぎゅーって。


痛くて 苦しくて だけどちょっと心地良い。


これはそう 恋。


私は佐々木 健吾に恋をした。


奈穂は相変わらず宮津とラブラブしていて 誰よりも近くで見守っている私にとっては 羨ましい限りだったんだ。


だけど 素敵な人なんかなかなか見つかるはずもなく。


でも 佐々木は私に何だかんだ絡んできて 嫌ではなかった。


しつこくて諦めの悪い男子が大嫌い。


恋より友情。


本気で人を好きになるのがどんな感覚か分からない。


だからきっと 今までの恋は本気じゃなかった。


そんなさめた私に訪れた恋。


寂しく大きな恋でした。