佐々木くんの胸をかりて泣いた。


それに少し罪悪感はあったが 剛のことは変わらず好きだった。


だから 別に佐々木くんとどうこうなった訳ではない。


「じゃあ またね。」


教室の前で剛が私に手を振りながら言う。


優しく微笑む剛に またドキッとするんだ。


「おはよー奈穂。」


「おはよー。」


これも 最近本当に嬉しく思うこと。


夏架と砂依と私 見つけたクラスの居場所。


「おはよう。」


暖かな5月の末 まだ始まったばかりの高校生。


流れていく時は穏やかで 毎日に幸せが溢れていた。


「宮津くんと一緒だったんだ。今日朝練は?」


砂依が私の隣の机に座って聞く。


「あぁ 今日は体調が悪いみたいで。」


「そっか。」


べたべたした関係よりずっと楽な さっぱりした仲。


でも いつも困るのがこの瞬間。


「高木 おはようっ。」


何にも知らない相澤くん。


「…おはよう。」


チラリと砂依を見ると 何とも複雑な表情で。


「…仲が良いだけだよ。」


私が毎日言う言葉。


「分かってる。 気にしないで。」


これも 砂依が毎日言う言葉。


私は 相澤くんには友情と愛情の境目がないのかとずっと思っていた。