「剛が…何の用かな…。」


ドキドキと胸がなって 苦しいほどだった。


卒業式以来会ってなかったし 本当に何の用なんだろう。


切れたらだめだと それでもとりあえず電話に出た。


「もしもし。」


声は少し高めに出した。


「あ…もしもし。」


あれ 電話だと声が違って聞こえる。


「どうしたの? …電話なんて 初めてだよね。」


剛には声しか届かないのに すごく柔らかい笑顔になる。


ずっと聞いていたい低い声が心地いい。


「うん お前にかけるの初めて。」


お前って ちょっとどきってする。


「初めての電話がこれで良かった。」


「…え?」


ビューっと部屋に入ってきた北風に カーテンがぶわっと膨らんだ。


「…好きなんだ 高木のこと。」


まるで時が止まったようだった。


風に揺れるカーテンも 外を歩く人も 何もかもゆっくりとして見えたんだ。


「……付き合ってほしい。」


指先が僅かに震える。


鼻がつーんと痛む。


冷たい北風のせいじゃない 溢れる涙のせいだ。


目の前が揺らぎ ポタッとこぼれ落ちた涙。


「……っ…。」


片想いなんかじゃなかった。