どれくらい抱き合っていただろう。

病院についたのは夕方6時くらい。
今はもう7時半になっていた。

私は晴也から離れて
ベッドの横の椅子に座った。

前のようにくだらない話をしていたら
病室のドアが開いた。
晴也のお母さんだった。

「あら!沙耶ちゃんじゃない!久しぶりね!」
「こんばんわ!」

晴也のお母さんのことは良く知っている。
小学校のときよく晴也の家に
遊びに行っていたから。
親同士も仲が良い。

「わざわざ来てくれてありがとうね~。
 あら!まさか、
 晴也とつきあってるの?」

鋭いな…

「うん!俺の彼女!」

晴也は言った。

「晴也をよろしくねっ♪」

晴也のお母さんも言ってくれた。

「いえ、こちらこそです!
 あの…それで…
 突然でごめんなさい。ちょっとお話が…」
「どうしたの?」

「あの…わたし、妊娠してるんです。
 晴也との子で…。今2ヶ月で…」
「生むつもりなの?」
「はい。」

晴也のお母さんは少し間をあけて言った。

「ごめんね?私それは賛成できないわ。」
「え…?」
「子供を生むってすごく大変なことなの。
 あなた達はまだ高校生でしょう?
 沙耶ちゃんも高校やめなきゃいけないわよ?
 今でも間に合うわ。おろしなさい。」
「いやです!わたしはどうなってもいい!
 この子だけは絶対に産みたいんです!
 お願いします!!」

私は晴也の前ということも
忘れて土下座した。

するとそれまで黙っていた晴也も横に来た。

「母さん!お願いだ!
 俺たちの間に宿った
 たった一つの大切な命なんだ!
 俺…こんなだけど…
 超頑張ってできるだけ長く生きるよ!
 沙耶を全力で守る!だから…お願いします!」

晴也も土下座してくれた。

「…もう二人とも顔をあげなさい。
 分かったから…。」

私たちは顔をあげた。

「沙耶ちゃん?
 さっきも言った通り、子供を産むのは
 とても大変なことなの。
 それを我慢しなきゃいけないわ。
 頑張るのよ?」
「はい…!ありがとうございます!」

「沙耶ちゃんのお母さんには
 私からはなしとくわ。
 自分からじゃ言いにくいでしょう?」
「ありがとうございます!」



4日後、学校から帰って晴也の
おみまいにいこうとしたら
母に呼ばれた。

「沙耶…。晴也君のお母さんから聞いたわ。
 妊娠してるんですって?」
「そうなの…。黙っててごめんなさい。」
「いいのよ。少し驚いたけどね。
 お母さんも協力するから…
 頑張りなさいね!!」
「お母さん…ありがとう!」