思いっきり走った。



気がつくと私はもう
晴也の病室の前まで来ていた。
晴也の病室は個室 533。

公園から病室までどうやって
来たかもおぼえていない。
覚えているのは受付で
晴也の病室を聞いたことだけ。

私は一回だけ深呼吸してから、いきおいよくドアを開けた。



晴也はベッドに横たわったまま
こっちを見た。

「晴也…!」
「さ…や…?
 おまえ…なんでここに…」
「拓実に問い詰めたの。」
「あいつ…」

晴也は点滴をしているからか
少し顔色がよくなっていた。

「あたし…ちゃんと言って欲しかったよ…」
「俺じゃ沙耶を守れない。
 だから…もうここへは来るな。」
「いやだ。」
「沙耶!」
「嫌だよ!守ってくれなきゃ困るよ!」
「沙耶…お願いだから言うこと聞…」
「私!晴也に言わなきゃいけないことがあるの!」
「…何?」
「…あたし妊娠してるの。晴也の子だよ?
 妊娠2ヶ月だって。」
「ウ…ソだろ…?」
「ほんとだよ…。
 晴也と別れてから私も体調おかしくて…
 先週、奈美に
 ついてきてもらって病院行ったの…。
 私、この一週間すごくつらかったよ…。
 まだ晴也のこと大好きなの…
 だから…!
 もう一回、晴也の傍にいさせて?」

「沙耶は…それでいいのか…?
 俺はもう長くない。
 一生守り続けるのは不可能だ。
 それでも…いいか?」
「いいに決まってるじゃない!」

私は晴也にとびついた。