それから約3ヶ月。
11月になった。
妊娠7ヶ月に入り、
私は少し早めに学校をやめた。
奈実と拓実は付き合い始めたらしい。
学校帰りたまに二人でお見舞いにくる。
晴也はこの間誕生日を向かえ、
18歳になった。


晴也の体は少しずつ
弱ってきているらしい。
病室からはあの海がよく見えて
晴也はよく外を眺めている。
でもその目がなんだか
悲しそうで私はみてられない。

今日は土曜日。
昼。

今も海を見てる。
二人ともしゃべらない。

でもそのとき晴也が話し始めた。

「さや?」
「ん?どしたの?」
「俺、あとどれくらい生きれるかな?」
「え…?」
「長く生きれるかな?」
「あたりまえじゃない!」
「そっか…」

晴也はこっちを見てから続けて言った。

「沙耶…結婚しよ?」
「え…?」
「俺、もう18歳になったじゃん。
 まだ沙耶を守るには
 半端な年なのかもしれない。
 でも、沙耶と結婚したら俺、
 長く生きられると思うんだ。
 少しでも長く生きて、
 少しでも長く沙耶を守りたい。
 少しでも長く沙耶の傍にいたいんだ!
 だから俺と結婚してください!」

すごく嬉しい。でも…

「私でいいの?」
「沙耶がいいの!」
「じゃあ…
 喜んで!!」

そのとき、拓実と奈実が
病室に入ってきた。

「「晴也、沙耶、結婚おめでとう!!」」

「え…二人ともなんで…?」

「「じゃ~ん!!」」

拓実と奈実の手にはすでに
晴也の名前が書かれた
婚姻届があった。

「昨日晴也に頼まれたんだよ。
 
 俺明日沙耶にプロポーズしようと思う。
 ほんとは俺が婚姻届取りに
 行きたいけど、俺は行けない。
 でも沙耶に取りに行かせるような
 ことはしたくない。
 だからお前らが行ってきてくんない?

 って。
 なっ!晴也っ!」

「おう!」

涙が溢れた。

「3人とも…ありがとーっ!!」

奈実は言った。

「何泣いてんの~!
 ほら!沙耶も名前書かなくちゃ!」
「うん!」

震える手で名前を書いた。



そのあと晴也と私の親を
呼んで許可をもらった。
どちらの親も涙のうかんだ
笑顔で祝ってくれた。


その日から私は 吉井沙耶 になった。

晴れの日でした。