「家、どの辺?」
「あ、もう、ここからだとすぐです・・・10分くらい」
「へー、じゃ、歩き?」
「はい!歩くの好きなんで。」
「夜風気持ちいいしね。じゃあ歩いて送ってくよ」
「家、こっち方向ですか?」
「いや、全く逆。しかも遠いから車なんだよね」
「えー!じゃあ大丈夫ですよ~本当に!」
「いいっていいって。それに話したいしさ」
「うわあ、すみません。ありがとうございます・・・」
話したい、って言われてちょっと嬉しいかも。
マキ、ごめんね。狙ってるとかじゃないから!
「なんかさ、市野ちゃんってゆるキャラっぽいね。ニコニコしててさ。」
「あ、それ、しょっちゅう言われます。ジブリ作品に出てそうとか。」
「はは、そうだねそんな感じ。いいじゃん、愛されキャラ」
「愛されてるんだったらいいですけどね。えへへ。」
「うんうん。いいポジションだよ。将来伸びるよきっと」
「ほんとですか!?やった~」
「でも、調子乗りすぎないでね」
「え、あ、はい・・・」
「ふははっ、やっぱ思った通りだ!」
「え?」
「いやね、上野ちゃんって、子供っぽいとこありそうだなーって。いい意味で単純、悪い意味でも単純みたいな」
「うーわー、当たってます!」
「でしょ。俺人の事観察すんの得意なんだよねー」
さすが。できる男だ。
「あ、家ここです」
「おー、ほんとに近いんだね。一人暮らしなの?」
「はい。あ、よかったら寄って行きます?お茶くらいだったら出しますよ」
「一人暮らしの女の子の家にそう易々とはね~」
「わー、ですよね」
「といいつつ寒いし寄ってってもいい?寒くてもう限界だ」
「あはは、手、震えてますよ。どうぞ」
「ありがとう!あ、お茶じゃなくてコーヒーがいーなー」
「了解です!熱々コーヒー出しますよ~」
「よっしゃ」
うーん。さりげない流れ。本当に寒いんだろうなとしか思えない。
全く下心はなさそう。やはりできる男~!
「おじゃましま~す」
「どうぞ。寒いっ。暖房つけなくちゃ」
「へー、部屋綺麗にしてるね」
「綺麗というか、生活感ないだけなんです」
「あー、生活力なさそうだ」
「うわー、やっぱりばれてました?」
「はは、でもちゃんとしてる部分はちゃんとしてそうだね。いいじゃん」
「えー、だといいんですけど・・・あっ、コーヒー淹れてきます。適当に座ってて下さい」
「お、ありがとう」