涙と、残り香を抱きしめて…【完】


「意地っ張りだな。
寂しいって言えよ」

「な、冗談じゃないわ!!
寂しいなんて、思った事もないわよ!!」


ムキになって怒鳴ってみたものの
虚しさを感じる。


「大声出すな…仕事中だぞ」

「ぐっ…」

「俺が一緒に居てやるから、心配すんな」

「……」


今までの私なら、笑い飛ばしていた成宮さんの言葉。
でも、なぜか笑えなかった。
それどころか、ソノ言葉が傷付いた心に沁みわたり
胸が熱くなる。


さっさとは違った眼差しを彼に向けた時だった
ドアがノックされ
理子ちゃんが試着室に入ってきた。


「おまたせしました。
やっと試着品が出来あがったんですね」


段ボール箱を覗き込み
笑顔を見せる。


「そんじゃ、順番に付けてもらうか…」


成宮さんから手渡されたブラとショーツを暫く眺めていた理子ちゃんが、顔を上げたと思ったら、意外な事を言う。


「仁さんにも見てもらっていいですか?」

「はぁ?」


どうして仁なの?


成宮さんも不思議に思ったのか
「なんで水沢専務?」
と、聞き返してる。


「だって、私をモデルに選んでくれた人だし…
それに、部長さんは私がモデルになるの反対だったから
私がコレを付けても、正当な評価出来るかどうか…」

「えっ…?」


私に向けられた敵意たっぷりの視線


「バカな事言わないで
私、そんな根性悪くないわよ」

「さあ…どうかしら?
部長って言っても、所詮、女だし…」

「それ、どう言う意味?」


険悪なムードの中
私と理子ちゃんの睨み合いが続いた。