成宮さんの姿が消えると
私は急いで湯船から上がり
タオルで濡れた体を包む。
玄関の扉が開くと同時に聞こえてきた
仁の慌てた声
「せい…いや、島津は…島津は来てないか?」
そして、仁とは対照的に落ち着き払った成宮さんの声
「来てますよ」
「…そうか…良かった。
悪いが島津を呼んでくれないか」
「それはいいですれど…
今、風呂に入ってるんですよ」
「風呂?」
「この寒い中、ずっと外に居たらしくてね
体が冷え切ってた。
彼女が部屋の鍵を持ってない事
水沢専務は知ってたんですよね?
どうしてもっと早く帰って来てやらなかったんですか?」
「……」
「あなたは、本当に冷たい人だ…」
仁の反論は聞こえてこない。
成宮さんの言った事…認めるの?
「そうだな…俺は冷たい男かもな…」
仁…?
「彼女の事は、俺に任せてもらえますか?
もう水沢専務に面倒見てもらわなくていいですよ」
どうして、そんな話しになっちゃうのよ!!
「成宮さん、勝手に余計な事言わないで!!」
堪らず脱衣所から飛び出し叫んでいた。
でもそれは、全く逆効果だった様で…
「なんだ…その格好は?」
タオル一枚身にまとい
まだ髪からは雫が滴り落ちてる私の姿を見た仁の表情が険しくなる。
そして、成宮さんの濡れたスーツに視線を移したと思ったら
何かを悟ったかの様に眼を伏せ
私のバックを玄関に置いた。
「そういう事か…」
「えっ?」
「邪魔して悪かったな。
ゆっくり楽しんでくれ…」



