人の体温って、こんなに温かいモノだったんだ…


その温もりと、成宮さんの優しい香りに
身も心も癒され
意識が遠のいていく様な感覚に襲われる。


仁以外の男性に抱きしめられ
こんな気持ちになるなんて…


「外は雪だぞ。
こんな薄着で居たら寒いに決まってる。
一体、何があったんだ?」


心配そうにそう言うと、更に強く抱きしめてくる。


「…専務とフィットネスクラブに行ったの…
ゴルフ教えてもらってたんだけど
嫌な事があって…

荷物をロッカーに入れたまま帰って来ちゃったから
部屋の鍵も携帯も無くて…」

「専務と?」


あ…


つい本当の事を言ってしまった事に焦る。


「あ、いや…西課長と専務と3人でコースに行く事になって…
だから少し練習したいと思ったものだから…

でも専務の教え方が厳しくて喧嘩になっちゃったの」

「ふーん…」


納得したのか…してないのか…
成宮さんはそれ以上何も言わず立ち上がるとキッチンに向かった。


そして数分後
少し熱めの日本酒が入ったグラスを私に握らせ
「こんなのしか無いけど、飲んで…」
と、微笑む。


「…あり…がとう…」


そっとグラスに口を付け
日本酒を一口飲むと
体の隅々までソノ熱が伝わり
一気に体が温まる。


「その酒、ウマいだろ?
水沢専務にも評判良かったんだ」

「…専務も飲んだの?ここで?」

「あぁ、星良の不倫の事をどう思ってるのか知りたくてさ…
この前、偶然部屋の前で会った時、誘ったんだ」

「そうだったの
で、専務はなんて?」


仁が成宮さんになんて答えたのか
知りたい…