自分の部屋の前でため息を付くこと…数回
仁に連絡したくても
携帯も無いワケで…
万事休すだ。
コンクリート打ちっぱなしのフロアーはシンシンと冷え
もう既に指先の感覚は麻痺してる。
寒い…
「非時用事態だから…仕方ないよね」
私はエレベーターを挟んだ隣の部屋を見つめた。
それは、成宮さんの部屋
戸惑いながら彼の部屋のチャイムを鳴らしてみたが
全く応答がない。
まだ帰ってないのか…
またため息を付き
成宮さんの部屋の扉の前でうずくまり
冷たくなった手に白い息を吹きかける。
どの位、そうしていたんだろう…
ジャージの中は半袖Tシャツ一枚
私の体は完全に体温を奪われ
冷え切っていた。
チーン…
エレベーターの到着音が、こんなに有りがたいと思った事は無かった。
本当は、仁が降りて来てくれるのを願ってた…
でも、降りて来たのは成宮さん
まるで捨て猫みたいに、縋る様な視線で彼を見上げた私を
驚いた顔で見下ろす成宮さん。
「どうした?こんな所で何してる?」
「自分の部屋の鍵が無くて…
…悪いんだけど…成宮さんの部屋…入れてくれないかな?」
全身が震え
かじかんだ唇では上手く喋れない。
「とにかく…入れ」
成宮さんが慌てて扉の鍵を開け
私を抱え中に入ると
リビングの暖房を入れる。
「すぐ暖まるから…」
そう言って、着ていた自分のコートを脱ぎ
ソレで私を包む様に抱きしめた。



