嬉しくて…嬉しくて…堪らず仁に抱き付き「有難う」と「大好き」という言葉を連呼していた。
夢の様だ…
仁と一緒にパリに行けるなんて…
「星良は、ずっと俺と一緒だ…」
「うんうん」
「おいおい、まだ泣くなよ。結婚式の前にボロボロの顔になっちまうぞ」
「うんうん」
仁の腕の中で何度も頷いていると、また明日香さんが私の背中を突っつく。
「お楽しみのところ悪いんだけど、そういう事だからコレは破棄させてもらうわね」
明日香さんが手に持っていたのは、私の『退職願』。
「ええっ?明日香さん、どうしてソレを?」
「ごめんねぇ~星良ちゃんがメイクしに行った時、バック預かったでしょ?
あの時、うっかりバックを落としちゃって、そしたら中からコレが出てきたのよ。
で、早まった事をしない様に私が預かってたの。
でももう、コレは必要ないでしょ?
あなたはこれからもピンク・マーベルの社員なんだから!!」
そう言って『退職願』を一気に破ると、舌をペロッと出し笑うと、それを見ていたマダム凛子が何かを思い出した様に手を叩く。
「あ、それと、桐ちゃんから伝言よ。モデルクラブはもう少し続ける事にたから、島津さんは必要ないって、パリで頑張って来いって言ってたわ」
「本当ですか?良かった」
「でも、島津さんは、いい友達を持ったわね
この明日香さんはね、私と桐ちゃんが病院で話してる所に怒鳴り込んで来たのよ。
仁と私は結婚するのか?って…」
「はぁ?そんなはずは…だって、あの時、明日香さんは私と一緒に病院を出てマンションまで送ってくれた…」
「島津さんを送った後、病院に戻って来たのよ」
「えぇーっ!!そうだったの?」
驚いて振り返ると、明日香さんが照れながらコクリと頷く。
「だって、納得いかなかったんだもの。
そこで本当の事を聞かされてホッとしたの」
「明日香さん…」
私の為に…そこまでしてくれてたなんて…全然知らなかった。
「そして、その足で明日香さんとここに来て、仁を説得してもらったのよ」
「説得?」
「仁ったらね、パリには行くけど、ショーに出るのは絶対イヤだってゴネてたの。
ましてや見せ物みたいな結婚式はしたくないなんて言って」



