「…なる…みや…さん」
「すまない。少しだけ、このままで居させてくれ…」
心なしか、成宮さんの声が震えているような気がして、それが堪らなく切なくて私は抵抗する事無く彼の胸に顔を埋めた。
懐かしい…成宮さんの香り…
この香りに何度も抱かれたんだよね。
一度は結婚し、共に人生を歩んで行こうと決めた人。
でも、今は遠い存在。
ショーが終わるまでは、安奈さんの事に触れたくなかったけど、もう無理なのかもしれない。
そう覚悟を決めたのに…
彼の口から安奈さんの名前は最後まで出なかった。
私の体を離し、彼が言ったのは…
「有難う…」という感謝の言葉と「星世の幸せが、俺の幸せだ…」だった。
その言葉に、どんな意味が隠されているのか私には理解出来ず、彼の本心が知りたくて歩き出した成宮さんに疑問を投げ掛けてみる。
「今、成宮さんは…幸せ?」
私はあえて安奈さんの名前を伏せて聞いた。どうせ別れるんだ。それなら、私が問い詰める形では無く成宮さんの口から真実を語って欲しかったから…
振り返った成宮さんが少し間を置き、風に乱された髪を気にしながら言う。
「星世が今、幸せだと思うなら、俺は幸せだよ」
違う…。私が求めてるのは、そんな答えじゃない。
もっと現実的な答えだ。
成宮さんにとって、誰と一緒に居る時が一番幸せなのか…それが聞きたいの。
「分からない…ちゃんと答えて!!
私に話しがあったんでしょ?いいからハッキリ言って!!」
思わず声を荒げた私に、なぜか彼は優しく微笑み掛けてくる。
「話しか…そうだな。
話しというか、星良にお礼が言いたかっただけだよ」
「お礼?」
「あぁ、結婚式の前に伝えておきたかった。
こんな俺を支えてくれた大切な…星良に…」
「えっ…」
益々、頭が混乱する。
成宮さんは、私と別れたいの?別れたくないの?
安奈さんの事はどうするの?
疑問だらけの彼の言動に納得いかず、成宮さんの小さくなった背中を追い掛けていた。
そして、ホールへ入って行った成宮さんの姿を探していると、既に帰って来ていた明日香さんが私に気付き駆け寄ってきた。
「星良ちゃん、こんなとこで何してるの?
リハーサルの時間が早まったって、他のモデルの人達はメイク室へ行ったわよ」



