「…星良」
反射的に振り向くと、そこに居たのは…
やはり、成宮さんだった。
「今、いいか?ちょっと話さないか?」
「あ、でも…私、明日香さんを探さなきゃ…」
成宮さんから視線を逸らしたまま、私はやんわりと誘いを断ろうとした。
ショーが終わるまでは、彼と突っ込んだ話しはしたくなかったからだ。
でも…
「西課長なら、さっき応援の社員を迎えに行くって車で出て行ったよ」
「えっ…」
マズいな…
断る理由が無くなり困っている私の背中を隣に居た工藤さんが押し「話してきなさい」と言ってニッコリ笑った。
「工藤さん…?」
彼女の意味深な笑顔に違和感を覚えたが、その事より眼の前に居る成宮さんの方が私には大問題だった。
「東京から帰って来て、ゆっくり話す時間がなかったからさ…
携帯に電話しても繋がらないし…」
そうなんだ。両親からの電話攻撃を避ける為に留守電にしてた時、成宮さんからの着信があったけど、あえて無視したんだ…
「俺と話したくない理由でもあるのか?」
「そんな事…」
もう断れ切れない。観念した私は「じゃあ。向こうで…」と玄関の方を指さす。
ホールの玄関を出て湿った空気が漂う芝生の上を成宮さんと肩を並べ、ただ歩く。
お互い無言のまま歩いて…歩いて…とうとう丘の先端まで来てしまった。
私の横には、ショーの結婚式で使われる予定の十字架の骨組みが丘を駆け上がってくる西風に吹かれ揺れている。
「これにバラが飾り付けられたら綺麗だろうな…」
成宮さんの言葉にコクリと頷き、私はやっと彼の顔をまともに見た。
「ここね、夜になると夜景がとても綺麗なの」
「あぁ、凛子先生に写真を見せてもらったよ。凄く綺麗だった」
名古屋の街を見下しながら成宮さんが眼を細め私も同じ様に街を見下ろすと、近寄って来た成宮さんに突然…
抱きしめられた。



