「新郎新婦が下がったところで、テーブルのお客様には30分ほど食事を楽しんでもらい
改めて島津さん達に登場してもらって、そこで結婚式を挙げる」
「そう…ですか…」
やっぱり、分からない。
どうして30分も時間をあける必要があるんだろう…
途中でそんな休憩みたいなものを入れてしまったら、見ている人達のテンションが下がってしまい感動が薄れてしまう可能性だってあるのに…
でも、こんな直前になって変更するくらいだから、マダム凛子に何か考えがあるんだろう…
私がとやかく言う事ではないと口を噤む。
「話しは以上よ。昼からランウェイで時間配分のチェックをするからそれまで自由にしてて」
「はい。失礼します」
工藤さんに肩を叩かれ部屋を出ようとした私に、今まで黙っていた仁が一言…
「島津なら大丈夫だ。頑張れよ」そう言ってくれた。
まさかそんな優しい言葉を掛けてもらえるとは思ってなかったから、さっきより激しく動揺した。
仁…
ダメだよ…
そんな眼で私を見ないで…
せっかく決心した気持ちが揺るぎそうになる。
「…有難う…ございます」
そう返事するのが精一杯で、顔を伏せたまま部屋を出た。
相変わらず明るく話す工藤さんの言葉も耳に入らず、バックの中に忍ばせた『退職願』を確認し、自分をいさめる様にそっと封筒に触れる。
そして1階のホールに戻ると、丁度、他のモデルさん達が到着したところだった。さっきまで静かだったホールは一変、花が咲いた様に華やかになる。
ほとんどが外人モデルで、色んな国の言葉が飛び交いまるで日本じゃないみたいだ。
でも、さすが選ばれたトップモデルばかり、ラフな格好をしてても、何か特別なオーラを感じる。
私なんかがこの中に入っていいものかと不安になってしまうほどだ。
「なんだか圧倒されますね…」
工藤さんにポロッと本音を漏らすと「何言ってるの?島津さんもあの中の一員なのよ」と背中をバシッと叩かれた。
すると、苦笑いを浮かべた私の後で聞き覚えのある声がしたんだ…



