助手席に乗り込みシートベルトを締める私に、明日香さんが不思議顔で聞いてくる。
「どうしても行きたい場所って、どこ?」
「うん。桐子先生の所…」
「桐子先生って、あのトップモデルだったKIRIKOの事?
確か、病気で入院してるのよね?」
「そうなの。私、桐子先生と約束したのよ。
ショーの前に必ず行くって…
明日はリハーサルで行けそうもないし、明後日は本番でしょ。今日しか行く日がないから仕事終わりに行くつもりでいたの」
「そっか…」
「出来たら…仁に会う前に行きたい。
もし仁に振られちゃったら、平気な顔で桐子先生に会いに行くなんて出来ないと思うから…」
「…星良ちゃん」
俯く私の頭を撫で、明日香さんが「分かった」と言ってエンジンを掛けた。
「ねぇ、その桐子先生だけど、どんな人?
実は私ね、学生時代に彼女のファンだったのよ。
当時はクールですっごくカッコよかったのよね~」
「そうだな…今でも素敵な人よ。
それに、15年も一人の男性を想い続けた一途な女性」
「えっ?15年?それ凄くない?」
明日香さんが興奮気味に眼を輝かせてる。
「うん。凄いと思う。
15年も愛し続けるなんて、なかなか出来る事じゃないもの。
なんかね、桐子先生と旦那さんの恋愛話しを聞いた時、私と仁との関係に似てる気がして…
想い続ければ報われるのかな…なんて思っちゃった」
そうだよね。桐子先生に比べれば、私の恋なんて辛いなんて言っちゃいけないレベル。
「じゃあ、桐子先生は訳アリ恋愛の大先輩って事か…
彼女に会って、爪の垢でも貰ってこようか?
ご利益あるかもよ」
「…だね」
眼を細め笑う明日香に、私は心の底から感謝してた。
明日香さんが居なかったら、私はどうなってたかな?
少なくても、もう一度、仁に気持ちを伝えようとは思わなかったろう。
明日香さん…本当に、有難う。
あなたのお陰で私は強くなれたのかもしれない…



