でも仁は、グラスに口をつけたまま、終始無言だった。
その横顔を眺めていると、やっぱりイケナイ事を聞いてしまったんだと後悔の念で胸がキリキリ痛んだ。
もう分かったよ。
何も答えてくれないのが、仁の答えなんだよね。
私は、仁に愛された事などなかったんだ…
「ははっ…ごめん!!私ったら、変な事聞いちゃったよね。
酔っぱらいの戯言(たわごと)だから、気にしないで!!」
精一杯、明るく笑ってみせる。
でないと、自分が余りにも可哀想で泣きそうだっから…
その時
必死で笑顔を作る私の手に、仁の指が触れた…
「……!!」
スラリと長い仁の指が私の指を絡めしっかりと握られると、もう片方の手が頬に触れる。
な…に?
予期せぬ仁の行動に、ただただ呆気に取られ言葉を失っていると、彼は頬を包む手をゆっくり動かし、指で私の髪をすいて行く。
徐々に接近してくる妖艶な視線。どうしていいか分からず戸惑い眼を逸らすと、私の耳元に熱い吐息が降りかかった。
「あっ…」
思わず漏れる声…
「…そんな分かり切った事…聞くな…」
「えっ?」
真っ白になった頭では、仁の言葉の意味が理解出来なかった。
「自分が質問した事も忘れたのか?
お前を一瞬でも本気で好きになった事があるかって聞いたろ?」
「あぁ…そうだった…よね」
納得したみたいにそう答えたけど、本当は半分上の空で、それどころじゃなかった。
仁の唇が首筋を滑り下り、顎を伝い辿り着いた先は…
「…星良」
今まで私を"島津"と呼んでた仁が"星良"と呼んだ時、柔らかいモノが唇に押し当てられた。
それは、間違いなく仁の唇…
鼓動が乱れ、体の芯がジワリと熱を持つ。



