「嘘…だろ?」
だがそれは、想像通りの名前。
情けない事に、俺はかなり動揺していた。
「嘘じゃないの…本当の事…
ピンク・マーベルのモデルに選んでくれた専務が、私には大切な存在になってた。
彼も私の事、大切に想ってくれてる…
つい最近まで、そう思ってた。
でも、違ってたの。
彼にとって、私はただの暇つぶし…
遊びの相手でしかなかった。
成宮さんも知ってるでしょ?
あの安奈っ娘。あの娘が本命だったのよ。
私とどうやって別れるか考えてた…なんて言われたし…
だから専務は、もう私と関わりたくないんだと思う。
当然だよね。
元カノが部下じゃあ、仕事もやり辛いだろうし」
「なんだそれ?
それが8年も付き合った女にする事かよ!!」
星良の話しを聞き、俺の怒りは頂点に達していた。
なのに星良は、今はもう恨んでないなんて言う。
「これで良かったと思ってるの
だって、彼に振られたから、成宮さんと付き合える様になったんだもん。
そうでしょ?」
「それは…そうだが…」
「だから、成宮さんも専務に仕返しするとか思わないで欲しい。
ピンク・マーベルに残って、企画を成功させて。
お願い…」
星良の言ってる事は、分からないでもない。
でも…
「もう遅いんだ。
俺一人で動いている訳じゃない。
これはもう、企業同士の戦いなんだよ」
「そんな…」
潤んだ瞳が俺を責める様に揺れている。
その顔を直視する事が出来ず、俺は視線を落とした。
俺が星良の為に良かれと思ってしてきた事は、間違っていたと言うのか?
しかし、もう引き返せない…
「すまない…」
俺がそう言うと、星良の大きな瞳から一筋の涙が零れ落ちた。
「…悪いけど…今日は帰って…」
涙をぬぐいながら寝室に走り去る彼女の後姿に、俺は何か得体の知れぬ恐怖を感じた。
まさか、星良はまだ水沢専務の事を…



